| 垂直跳びや握力など体力測定の基準値は男女別、年齢別になっているのに、コレステロールや血糖値など検査の基準値が一律に決められているのはなぜ? こんな疑問から、男女差や年齢を考慮した新しい検査の基準値が提唱されている。
コレステロールなどの基準値は現在、各分野の医学会が定めているが、多くは男女、年齢を問わない一律の数値となっている。
これに対し、東海大医学部教授の大櫛陽一さん(医学教育情報学)は「検査の適正値は、性別や年齢によって異なる。高齢者に若い人と同じ基準値を適用すると、異常と判定される人が増えるなど問題が大きい」と指摘し、新たな基準値を提唱した。
全国で健康診断を受けた約70万人から健康な人のデータを抽出、男女別、年齢別に解析し、数値の高い人と低い人を除く約95%の人が収まる範囲を適正な数値とする、国際的な方法で基準値を算出した。
コレステロール
既存の日本動脈硬化学会の基準では、総コレステロール値220以上で高コレステロール血症とされる。だが、大櫛さんは「高コレステロールは、若い人では心筋梗塞(こうそく)の要因になるが、年齢とともにその傾向は薄れ、70歳以上ではほとんど関係ない」と言う。
そこで今回の基準では、20歳代前半こそ学会と同様220が正常の上限だが、50歳以上では男性が260、女性280程度とした。
大櫛さんは、同様の大規模調査を行った三井記念病院(東京)総合健診センター所長の山門実さんらとともに、高コレステロールの薬物療法を行う目安となる数値を公表した。
血糖値
今回の基準値は、男性は緩やかに、女性は厳しく設定されている。
日本糖尿病学会の従来の診断基準では、正常な血糖値(空腹時)の上限は110未満とされている。ところが大櫛さんによると、これでは若い女性の糖尿病が見逃されるという。
20〜39歳の女性160人を調べたところ、空腹時血糖値が100〜109と正常でも、ブドウ糖を摂取して2時間後に血糖値を測る負荷試験では、約6割に異常が見つかったからだ。空腹時血糖100未満では、負荷試験での異常は約2割にとどまった。大櫛さんは「若い女性の上限値は100未満に引き下げる必要がある」と話す。
肥満
肥満は心筋梗塞や脳卒中の要因とされ、日本肥満学会は体重(キロ・グラム)を身長(メートル)の2乗で割ったBMI(体格指数)で25以上を肥満としている。だが、実際はやせている人ほど死亡率が高く、「中高年は、小太りの人が長生きできる」(大櫛さん)。ただ、若い男性は、BMIが25を超えると糖尿病になりやすい。
そこで、「上限値」「目標値」の2種類の基準が設定された。上限値を超えた場合は精密検査を行い、目標値を超えたら定期的に経過を見る。中高年男性の上限はBMI28程度、目標値は25程度。
血圧
高血圧の場合、「上限値」は、それを超えた場合に薬物療法を始める目安で、「目標値」を超えたら、運動や食事の改善を行う。
今回の基準値については、大櫛さんの著書「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版)に詳しい。
(読売新聞)
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